君とは笑えない

家に風呂がない、といっても言い過ぎではないように思えるほどだ。 私の家にはシャワールームがあり、それはここに住む者全てが共用している。 そもそも、家と呼ぶレベルに到達していない、とすら言えるが、自身の寝床をそうも貶すこともないだろう。 「銭湯…

こうやって愛したの 2

菅さんと出会ったのは意外にも、大学3回生の春だ。随分と長い時間を彼女と過ごしたように思えていたが、頻繁に会っていた期間は2年ほどだった。しかしその期間などは関係なく、彼女との時間はとても濃厚で、色褪せない。 「ねえ、杉本くん、あの娘知ってる?…

こうやって愛したの 1

「え、梅田だよ。君覚えてないの」 プールサイドから片足をプールに突っ込み、菅さんが怪訝な表情を向けた。 僕が2年前に菅さんに会ったのは、梅田といっても、随分と辺鄙な場所であり、大衆居酒屋といっても、これまたかなり客の少ない店だった。 だから今…